悪役ばかりでない技術 Winny

〜まさに堅気のWinny、P2Pのファイル転送サービス「Squidcast」開始〜
米国のベンチャー企業であるスクイッドキャストは2008年1月28日(米国時間)、大容量ファイルをユーザー同士が交換し合える無料サービス「Squidcast」を日米同時に開始すると発表した。
ファイルを送りたいユーザーと受け取りたいユーザーがSquidcastのWebサーバーへアクセスし、そこでファイルを交換し合う。最大の特徴は、交換するファイルの大きさや数に制限がないこと。サーバーを用いない新しい概念のファイル転送方法で実現した。1つで数百MBから数GBに及ぶ静止画や動画をいくつでも送れるうえ、保存する期間に制約がない点も特徴だ。ファイルを送る場合はユーザー登録する必要があるが、受け取る側は不要。当面は、ベータサービスの位置付けで提供する。
企業やプロバイダーの電子メールサーバーでは負荷軽減のために、送受信できる添付ファイルを10M〜20MB程度の大きさに制約していることが多い。フリーメールサービスも同様で、極めて大きなファイルを誰かに届けることはインターネット上では難しい。この問題を解決すべくSquidcastと同様の無料サービスは存在していたが、ファイルサイズや数に制限が設けてあるのが通例。例えば、代表的な「宅ファイル便」(エルネット)の場合、最大10個までのファイルを同時に3人までにしか送れない。容量も合計50MBの範囲でなければならない。
サービス開始にあたり、スクイッドキャストのダニエル・プットマン会長とジェッド・プットマン社長にそのメカニズムを聞いた。ポイントは「コラボレーティブ・リレイ・ネットワークと呼ばれる新しい概念を考案し、従来の制約を解除できたこと。 これはSquidcastの登録ユーザー全員のハードディスクとインターネット回線の帯域を少しずつ間借りさせてもらう仕組み」である。Squidcastではファイル保管庫のようなサーバーは用意せず、Squidcastユーザー全員で、ファイルをピアツーピア(P2P)方式で共有し合う。ファイルを送ろうとするパソコン上では、ファイルは細切れに分割され、さらに暗号化して圧縮される。このファイルの細切れが、その時点でパソコンを起動しているSquidcast登録ユーザーへ一斉に送信される。何人に送られるかはファイルの大きさで変わってくる。一番少ない場合でも16分割する。
結果としてSquidcastを使っているユーザーのパソコンには、誰かが誰かに送ったファイルの細切れが残る。それ自体は中身の解読が難しく、無意味なデータであるため安全性が担保される。なお、送受信の速度に影響が出ないように、国内ユーザーが送ったファイルの細切れは、国内でのみ保存されるように工夫してある。
この状態で受け取り手のユーザーが、ファイルのダウンロードをWebブラウザー上で指示すると、Squidcastのサーバーが細切れになったファイルの在りかを受け取り手のパソコンに伝える。これに応じて、ピアツーピア方式で一斉にファイルを集める。万が一、パソコンを起動していない登録ユーザーがいてファイルを送れない場合でも、Squidcastサーバーが当該ファイルを自動的に生成し、代わりに受け取り手へ送信する。最終的に受け取り手のパソコンはファイルを統合し、暗号を解いて復元する。細切れのファイルを持つパソコンの50%が起動していれば、必ずファイルを元に戻せるという。
登録ユーザーがパソコンのハードディスクとインターネット接続回線の一部帯域を常にSquidcast側に貸し出すことへの影響については、「1GBのファイルなら約1000個程度に分割する。ハードディスクやインターネット回線の負荷はごく微少なはず」と説明する。ファイルを受け取る側にとっては、細切れのファイルを集めて統合する処理のオーバーヘッドが不安だが、「特に日本では、光ファイバーをはじめとしたブロードバンド回線が普及しており、気にならないレベル」という。
仕組みだけを見れば、Squidcastは「Winny」などのファイル交換ソフトと似ていなくもないが、ユーザー登録などを通じてSquidcast側がネットワーク全体と利用者を管理できるうえ、“生のファイル”を単独でやり取りしない点で大きく異なる。また、送信したユーザーがファイルを削除する指示を出すと、散らばった細切れのファイルは一斉に削除されるため、ファイルが流出してインターネット上に永遠に漂い続ける危険もない。ちなみに社名は、ファイルを共有し合う様子が、イカ(squid)の足のように広がっているのに似ていることから命名した。
関連サイト
squidcast
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