ヨーロッパでは、ディーゼル乗用車の登録台数が伸びています。
ヨーロッパでは、ディーゼル乗用車の登録台数が伸びています。国によってはガソリン乗用車を凌ぐほどです。一方、10年前に誕生したばかりのハイブリッド車は、知名度も低く、車種も少ないために、ヨーロッパではディーゼル乗用車の圧倒的な勝利です。
ヨーロッパで、これほどディーゼル乗用車の販売台数が伸びた理由は、経済性が高いことです。つまり燃料代がガソリン乗用車よりも少なくてすむということです。ただし、ディーゼル乗用車の燃料である軽油の値段は、各国の軽油税の高低によって違い、軽油の税金が高い国、たとえば英国ではディーゼル乗用車が多いというわけではありません。
ディーゼル乗用車の経済性の高さは、ディーゼルエンジンの効率の高いことに由来しています。その主な原因は、熱効率が高い、摩擦抵抗が少ない、薄い混合気で燃やせるの3点です。
【内燃機関】エンジンは、ご存知のように燃料と空気の混合気を燃焼させた熱を動力に変換するものです。
発明当初は、エンジンに取り入れた空気に燃料を混ぜただけで燃焼させていましたが、点火するまえに圧縮すると効率が高まることが分かりました。それ以降は、ガソリンエンジンは空気とガソリンの混合気を圧縮し、ディーゼルエンジンは空気を圧縮し、それから点火(着火)することになりました。
この原理は熱力学第二法則によるものですが、要するに燃料の燃える温度と排気の温度の差が大きいほど効率が良いということです。
これは、燃焼開始時の燃焼ガスの体積(上死点における容積)と排気開始時の体積(下死点における容積)の比(膨張比)が高いほど効率が高いということに置き換えられます。

プリウスのエンジンも原理的にはアトキンソンサイクルだ
燃焼開始時の燃焼ガスの体積を少なくするためには、圧縮比を高くする必要があります。ガソリンエンジンでは、こうすると異常燃焼が起きてしまうのですが、点火プラグで点火せず、圧縮されて高温になった空気に軽油を噴射することで自己着火するディーゼルエンジンでは、これが可能なのです。ディーゼルエンジンの圧縮比は、ガソリンエンジンのほぼ2倍です。
ちなみに、排気開始時の体積を大きくする方法としては、アトキンソンサイクルと呼ばれる方法がありますが、これはガソリンエンジンで可能です。マツダ・デミオでは、この原理を応用したミラーサイクルが使われています。ただし、実質的には排気量が少なくなってしまいますので、出力の低下はまぬがれません。過給器が必要になります。また、ハイブリッド車のプリウスのエンジンも原理的にはアトキンソンサイクルです。
話が横道にそれましたが、ディーゼルのもうひとつの利点は、薄い混合気でも燃焼が可能な点です。これはエンジンに流入する空気量を運転条件によって制限しなくともすむということです。
少ない燃料でもエンジンが仕事をできるということですから、燃料消費量が少なくて済む=燃費が良いということになります。
また、流量を制御するバルブ、スロットルバルブが不要です。そのおかけでスロットルバルブが空気の流れを阻害するガソリンエンジンよりも、流入抵抗が少なくてすみます。これを専門的には摩擦抵抗(フリクションロス)が少ないといいます。
一方、爆発圧力が高いのでディーゼルエンジンには、強くて頑丈なボティ(シリンダーブロック)やクランクシャフト、ピストン、コンロッドが必要になります。そのために重くて大きなエンジンになってしまいます。そればかりか、回転数をあまり高くできず高出力化が不得意です。ただし、ターボチャージャーで空気を押し込んでもノッキングが起きづらいので、ターボチャージャーと組み合わせて出力を高めるのが常套手段です。
しかし、自動車による大気汚染が悪化するようになると、ガソリンエンジンばかりかディーゼルエンジンの排ガス規制が強まりました。ディーゼルエンジンの利点ばかりに頼るわけにはいかなくなったのです。
こうした規制強化の背景には、ディーゼル車の規制が大変にゆるかったことがあります。ガソリン車が昭和53年(1978年)規制から三元触媒を付けていたのに対して、ディーゼル車はついこのあいだまで、まったく触媒をつけずに走行することが許されていたのです。
ディーゼル車の大半はトラックですから、国民の健康よりも産業を優先する政策が取られていたということです。また、軽油の税金が安いのも同様です。このようなディーゼル車の利点をそのまま乗用車も享受するということには、議論が残るのではないでしょうか。
産業優先政策の結果、我が国は公害大国になってしまいました。しかし、時代はそれを許さなくなっています。ディーゼルエンジンは、その利点を生かしてCO2排出量を削減しつつ、大気環境を保全しなければならなくなったのです。その最終規制が、日本ではポスト新長期規制として09年秋から、米国ではTier2Bin5として実質的には今年から、ヨーロッパではずっと遅れて2014年のユーロ6から実施されようとしています。
ディーゼル車は大きな転換期を迎えました。その中で、メルセデス・ベンツは大胆にもディーゼル・ハイブリッドを提案し、さらにはディーゼルエンジンとガソリンエンジンを組み合わせて、その利点を生かすディゾットエンジン(HCCIエンジン)を提案しています。
メルセデス・ベンツの逆襲が始まったといってよいでしょう。再び、世界の自動車技術と高級車の覇権を握ることになるのではないでしょうか。
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